名古屋地方裁判所 昭和58年(わ)43号 判決 1983年5月30日
本店所在地
愛知県春日井市御幸町三丁目四番地の五
キンチョー株式会社
(右代表者代表取締役岡田義邦)
本籍・住居
愛知県春日井市御幸町二丁目三番地の三四
会社役員
岡田義邦
昭和一二年七月一一日生
右両名に対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官中屋利洋出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人キンチョー株式会社を罰金五〇〇万円に、被告人岡田義邦を懲役八月に処する。
被告人岡田義邦に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人キンチョー株式会社(以下「被告会社」という)は、愛知県春日井市御幸町三丁目四番地の五に本店を置き、ベビーシューズの製造販売を営むもの、被告人岡田義邦は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括するものであるが、被告人岡田義邦は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部除外等の方法により所得の一部を秘匿したうえ、
第一 昭和五三年一二月二一日から同五四年一二月二〇日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が三、八四五万七、八四八円で、これに対する法人税額が一、四五二万二、八〇〇円であるのに、同五五年二月二〇日、同県小牧市小牧一、九五〇番地所在の小牧税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一、三八一万一、六八〇円で、これに対する法人税額が四六六万四、四〇〇円である旨の虚偽過少の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額と右申告税額との差額九八五万八、四〇〇円を免れ、
第二 同五四年一二月二一日から同五五年一二月二〇日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が四、一〇九万五、九九二円で、これに対する法人税額が一、五五九万八、〇〇〇円であるのに、同五六年二月二〇日、前記税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一、七九九万二六二円で、これに対する法人税額が六三五万六、〇〇〇円である旨の虚偽過少の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額と右申告税額との差額九二四万二、〇〇〇円を免れ、
第三 同五五年一二月二一日から同五六年一二月二〇日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が三、〇五四万六、九三二円で、これに対する法人税額が一、一八六万九、三〇〇円であるのに、同五七年二月一九日、前記税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一、五三四万七、六八四円で、これに対する法人税額が五四八万五、七〇〇円である旨の虚偽過少の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額と右申告税額との差額六三八万三、六〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全部につき
一 被告人岡田の当公判廷における供述
一 被告人岡田の検察官に対する供述調書
一 被告人岡田の大蔵事務官に対する昭和五七年六月一日付、同年七月五日付、同月一九日付、同年一〇月九日付、同年一一月二七日付、同年一二月一四日付各質問てん末書
一 被告人岡田作成の同年一一月二七日付上申書
一 岡田孝子の検察官に対する供述調書
一 岡田孝子の大蔵事務官に対する質問てん末書四通
一 石黒佑治の検察官に対する供述調書
一 石黒佑治の大蔵事務官に対する質問てん末書
一 大蔵事務官作成の同年一〇月一四日付、同月二九日付、同年一一月一七日付、同月二二日付(検察官請求証拠等関係カード甲番号30)、同月二四日付、同月二五日付及び同年一二月一〇日付各査察官調査書
一 小牧税務署長作成の同年一二月九日付証明書(前同甲番号8)
一 春日井商工会議所職員作成の「特定退職金共済脱退一時金支払い証明書」と題する書面
一 名古屋法務局春日井出張所登記官作成の登記簿謄本
判示第一、第二の各事実につき
一 被告人岡田の大蔵事務官に対する同年六月二日付質問てん末書
一 小牧税務署長作成の同年一一月一七日付証明書(前同甲番号2)
判示第一、第三の各事実につき
一 中條芳彦の大蔵事務官に対する質問てん末書
一 大蔵事務官作成の同年一〇月二八日付査察官調査書
判示第一の事実につき
一 被告人岡田作成の同年九月二九日付上申書
一 大蔵事務官作成の同年一〇月二六日付及び同年一一月二二日付(前同甲番号31)各査察官調査書
一 中央信託銀行株式会社係員及び安田信託銀行株式会社係員作成の「回答書」と題する各書面
判示第二、第三の各事実につき
一 被告人岡田の大蔵事務官に対する同年九月二九日付質問てん末書
一 小牧税務署長作成の同年一一月一七日付証明書(前同甲番号3)
判示第二の事実につき
一 朝日生命保険相互会社収納部長作成の「回答書」と題する書面
判示第三の事実につき
一 虎谷清の大蔵事務官に対する質問てん末書
一 小牧税務署長作成の同年一一月一七日付証明書(前同甲番号4)
(法令の適用)
一 罰条
判示第一、第二の各所為
被告会社につき 昭和五六年法律第五四号「脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律」による改正前の法人税法一五九条、一六四条一項
被告人岡田につき 行為時において右法律による改正前の法人税法一五九条、裁判時において右改正後の法人税法一五九条(刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑を適用し、いずれも懲役刑選択)
判示第三の所為
被告会社につき 右法律による改正後の法人税法一五九条、一六四条一項
被告人岡田につき 右法律による改正後の法人税法一五九条(懲役刑選択)
一 併合罪の処理
刑法四五条前段、被告会社につき刑法四八条二項、被告人岡田につき刑法四七条本文、一〇条(最も重い判示第三の罪の刑に加重)
一 被告人岡田の刑の執行猶予
刑法二五条一項
(裁判官 白木勇)